新年おめでとうございます。今年も宜しくお願いします。
昨夜は焼酎を飲んでCDを聞いてすぐ寝てしまいました。
年賀状代わりに、大好きな茨木のり子さんの詩を。

「もっと強く」

もっと強く願っていいのだ
わたしたちは明石の鯛がたべたいと

もっと強く願っていいのだ
わたしたちは幾種類のジャムが
いつも食卓にあるようにと

もっと強く願っていいのだ
わたしたちは朝日の射すあかるい台所が
欲しいと

すりきれた靴はあっさりとすて
キュッと鳴る新しい靴の感触を
もっとしばしば味わいたいと

秋 旅に出た人があれば
ウインクで送ってやればいいのだ

なぜだろう
委縮することが生活なのだと
おもいこんでしまった村と町
家々のひさしは上目づかいのまぶた

おーい 小さな時計屋さん
猫背をのばし あなたは叫んでいいのだ
今年もついに土用の鰻と会わなかったと

おーい 小さな釣具屋さん
あなたは叫んでいいのだ
俺はまだ伊勢の海もみていないと

女がほしければ奪うのもいいのだ
男がほしければ奪うのもいいのだ

ああ わたしたちが
もっともっと貪婪にならない限り
なにごとも始まりはしないのだ

詩集「対話」より

(貪婪=どんらん。ひどく欲が深いこと、また、そのさま。貪欲。)